「音楽家はビジネスマン」
2月5日付日経新聞夕刊のコラム
「あすへの話題」は大江千里氏。
大江氏は私と同世代で
80年、90年代にシンガーソングライター、
ラジオ番組のパーソナリティ、
テレビ番組の司会として活躍していた。
それが2008年に音楽活動を休業し、
米国へジャズ留学、
今は米国在中のジャズピアニストとして活躍している。
米国に残って
ジャスをやりたいという気持ちになり、
永住権を申請、
ジャズレーベルを立ち上げ、デビューした。
日本では
所属事務所とレコード会社が味方になってくれて、
シンガーソングライターとして音楽に専念できた。
一方、米国では
全部自力でやらなくてはいけない。
会社(レーベル)を興し、
弁護士や公認会計士を雇い、
社長としてメディアPR、
ラジオPR等の専門家を探して個別に契約を交わす。
著作権の管理会社にも登録する。
面倒だが慣れると信頼が生まれ、
仕事はやりやすくなる。
米国の音楽ビジネス界は
コネがないとなかなか表に出にくい面がある。
PR担当と僕の音楽の相性がバチッと合うと
チャートが跳ね上がる。
厳しい世界だが、
自分で選んでいるので納得できる。
この国には
唯一無二の個性を
すくい上げてくれる懐の深さがある。
米国の背中を追うのではなく、
日本人であることを貫きながら、
ジャズをやりぬく。
音楽家はビジネスマンだ。
昨年のショパン国際ピアノコンクールで
第2位になった反田恭平氏も経営者の一面を持つ。
オーケストラの会社を設立。
「オーケストラをつくることが最終目標ではなく、
演奏による収益で大きく成長させ、
新しい事業をして、上を目指すため」
「若い音楽家たちが継続的に活躍できるように
経済基盤を整える必要がある」。
最終的には音楽学校を作る。
キーワードは「唯一無二」。
音楽家自体が特殊な能力なのかもしれない。
だが音楽家同士の競争もある。
その中で違いを発揮して認めてもらう。
いわゆる他者との差別化。
これを極めていく。
大江氏では
米国人をマネするのはなく、
日本人であることの個性を深掘りし、
音楽に反映している。