「蟹の甲羅」
渋沢栄一の「論語と算盤」の中で
蟹の甲羅の話がある。
「自分を知る」。
世の中にはずいぶん自分の力を過信して、
実力とかけ離れた野望を持つ人がいる。
あまり前に行くことばかり考えて、
身の程を知らないと、
とんだ間違いをしでかす。
私(渋沢栄一)は
「蟹(かに)は甲羅(こうら)に似せて穴を掘る」という
考え方で身の程に会うようにすることを心掛けています。
孔子は
「心が望むままに行動しても
ルールを破るようなことがない」と、
つまり
「身の程をわきまえつつ前に進むのがいい」
と言った。
1月24日付日経新聞の「私の履歴書」
(岡藤正広/伊藤忠商事CEO)。
成長を期するなら、
やはり財閥系に追い付け追い越せだ。
ただし、
いきなりトップを狙えと言うと
現実味が乏しく社員も本気にならない。
身の丈をわきまえながら、
もう一歩の努力で手が届きそうな目標をいかに作り、
組織をそこに導けるか、
これが私なりのマネジメントの極意。
ヒントになったのが
渋沢栄一著書「論語と算盤」で
説いた「蟹穴主義」。
蟹は自分の甲羅の大きさに
見合った穴を掘る。
身の丈にあった行動をとりながら、
その甲羅を取り換えて成長していく。
会社の成長も蟹を見習うべき。
万年4位の負け癖を取り除くには、
小さな成功を積み重ねて
社員たちに「やればできる」
を実感させることが先決。
リーダーに問われているのは、
手が届きそうな
甲羅のサイズをどう設定するかだ。
最初の甲羅は純利益。
粗利益は2位だが経費が大きい。
無駄を削れば万年4位は返上できる。
次の甲羅は、
「非資源でナンバーワン」。
資源分野で劣っているため、
勝てるところで目標を設定。
勝ち癖をつくるために選んだ甲羅。
20年6月商社3冠を獲得。
小さな会社が参考にするのは
「自分を知る」。
30年近くコンサルティングをしているが、
自社をよく知っている社長は多くはない。
自社の強みを理解して、
強みを活かして、
他社より秀出ること。
つまり勝ち癖をつくる。
そして、身の丈に合った、
ちょっと背伸びをする目標の設定。
「蟹穴主義」。
いいですね。