「弱者の垂直統合」
10月20日付朝日新聞、
「M&A仲介トラブル」という記事。
中小企業のM&Aは、ここ数年で急増した。
中小企業庁の集計では22年度で4千件超。
経営者の高齢化や人手不足も背景に、
M&A仲介の需要は増え続け、
買った会社(売り手)を
食い物にする買い手のトラブルが増えている。
また東京商工リサーチによると、
2023年の「休廃業・解散」企業は、
4万9,788件(前年比0.3%増)で2年連続で増加。
2023年の企業倒産は
8,690件(前年比35.1%増)と大幅に増加しており、
休廃業・解散と倒産を合算した
「退出企業」は5万8,478件(同4.3%増)で、
過去最多となった。
事業再構築などの取り組みが遅れ、
生産性向上や利益率の改善が見通せない状況が続く場合、
倒産と休廃業のはざまに揺れながら
市場から退出する企業はさらに加速しそうだ。
自分の周りにも廃業や中小企業の売却話は
多く聞こえてくる。
中小の製造業では
供給先(仕入先)が廃業する話がある。
仕入リスクが発生する。
従来から供給された材料や製品ができなくなり、
新たな供給先を探さなければならない。
そこで、
供給先をM&Aするほど資金はないが、
自社に供給される製品を製造する
機械と職人(従業員)のみを譲り受けることはできる。
内製化である。
同じように販売先でも
経営者の急死による廃業もある。
自社製品に関わる機械と職人を引継ぎ、
内製化していく。
あまり資金をかけず、
人的つながりで統合していく。
専門用語で「垂直統合」という。
垂直統合とは、
企業が製品やサービスの供給に必要な工程を拡大すること。
企業グループが、
製品やサービスの供給に必要な価値連鎖に沿って、
付加価値の源泉となる工程を取り込む。
取引コストの削減や経営の効率化をもたらす。
M&Aは資金を多く使うため、
弱者の戦略ではないとされてきた。
しかり自社を取り巻く「相関図(販売先・仕入先)」の中で、
一つでも欠けたら、リスクが高くなるのであれば、
資金をかけずに、
人的なつながりで内製化することは弱者の戦略である。
10年先を見据えて、販売先・仕入先を直視する。